医療カナビス是非論争
両派の主張に科学はどのように答えているのか
Source: Los Angeles Times
Pub date: 18 Aug 2008
Medical marijuana: What does science say?
Author: Jill U. Adams, Special to The Times
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賛成派の主張 反対派の主張 バポライザーについて
尋ねる相手によって、カナビスは危険なのでヘロインやPCPと同じように違法にしておけなければならないと言われたり、逆に、カナビスは奇跡のハーブでさ まざまな医療恩恵を持っているが、政府は悪害を並べ立てるだけで、そのような価値はないとして調べようともしていないと言う答えが返ってきたりする。
カナビスの非犯罪化や医療カナビスの合法化に取り組んでいるマリファナ・ポリシー・プロジェクトのブルース・ミルケン広報部長は、「結局のところ、カナビ スの成分を化学合成する研究では、いっそうピュアでしかも 「ハイ」 にならないような成分を作り出すことが目標となっています。そこには、病気の人が天 然の植物をつかえなように犯罪化して、非常に高価で合法的なピルを売る意図が隠されているのです」 と言う。
これに対して、ホワイトハウス麻薬撲滅対策室(ONDCP)のトム・ライリー広報官は、カナビス運動家たちはフリーパスを求めているのであって、「正規の医薬品認証プロセスを免れようとしているだけなのです」 と批判している。
アメリカでやっと始まった医療カナビス研究
アメリカでは、最近までカナビス研究と言えばその悪害を追求する研究が主で、医療的な可能性を調べる研究は実質的に認められていなかった。しかし、医療カ ナビスに関する政治的な議論が相も変わらず繰り替えされている中で、カリフォルニア州の医療カナビス研究所を中心に、数人からなる研究者の小グループが、 カナビスの喫煙で痛みや吐き気、筋肉の痙攣などの治療ができるかどうかを調べるために本格的な研究を開始している。
研究者たちは、どのような薬であってもリスクはあると言う。例えば、アメリカのどの家庭の薬箱にも入っているアスピリンなどの鎮痛剤や虫刺されに使う抗ヒ スタミン剤ですら何らかのリスクを持っている。医師が医薬品を処方するときには、当然、その医療メリットとリスクとのバランスを考える。なのに、なぜカナ ビスではそれができないようになっているのか、と彼らは疑問を投げかける。
カナビスには、慢性的な痛み、癌の痛み、多発性硬化症、エイズの消耗症候群、化学療法にともなう吐き気、などに医療恩恵のあることには間違いなく真実だ が、それらを理解して利用しようとすることに対しては妨害もあると研究者たちは言う。また、カナビス使用によるリスクを徹底的に調べた科学研究では、確か にリスクもあるが、一般的には小さい範囲に収まっているとも言う。
サンフランシスコ総合病院で血液学と腫瘍学部門の部長を務め、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の臨床医学の教授でもあるドナルド・アブラム博士は、 癌のいたむに苦しみ、ものが食べられず、良好な睡眠が妨げられ、治療の副作用で吐き気や嘔吐に悩まされ、自分の置かれた状況に落ち込んでしまうような患者 さんたちの面倒をみているが、医療カナビスを利用できるカリフォルニアに住んでいることに感謝していると言う。
「患者さんとは、医療カナビスについて話すことができますし、治療に使うことを薦めることも珍しくありません。」 だが、一方では、連邦政府当局はカナビ ス・ディスペンサリに対する強制捜査を繰り返し、患者さんに推薦状を書いた医師に対しても何かにつけて詮索してくるという現実もある。
カナビスの医療利用に関しては賛否両論があるが、そのいずれもが極端に偏りやすい。以下ではそれを見直すきっかけになるように、科学がどのように答えているかを示している。
●賛成派の主張
カナビスには慢性痛や吐き気に医療効果がある
従来の鎮痛剤ではあまり効果の得られないような神経障害性の疼痛が、カナビスの喫煙で緩和されることはいくつかの研究で示されている。
カナビスが医療的に利用され始めたのは、数千年前にまで遡ることができる。紀元前の時代では、中国で医療用のお茶として使われていたほか、インドではストレスの除去、またアジア全域、中東、アフリカでは、耳痛や出産などの痛みの緩和のために利用されてきた。
ここ数十年の最近の研究では、カナビスには、HIVや糖尿病、脊髄損傷、癌、多発性硬化症などにともなう神経障害のほか、さまざまな種類の痛みに効果のあ ることが明らかにされている。また、化学療法や抗レトロウイルス療法の副作用で発生する吐き気や、エイズの消耗症候群による重度の食欲喪失にも役に立つと 言われている。
カナビスのこうした作用は、THCをはじめとする60種類ものカナビノイド成分によって起こる。もともと脳内にはエンドカナビノイド(内因性カナビノイ ド)と呼ばれる物質が自然と生成され、神経細胞の専用レセプターと結合して生理作用を引き起こすことが知られているが、カナビスの外因性のカナビノイド成 分はたまたま同じレセプターに結合して似たような働きをする。
現在では、THCを化学合成して製造したマリノールと呼ばれる合法処方医薬品も利用できるようになっている。しかし、経口投与で摂取されるマリノールは、 吸収に大きなばらつきがあり、ケースバイケースで効果が予測できないことや発現が遅いといった欠点があり、研究者たちは、カナビスを喫煙するのに比較して 効果がずっと劣っていると言う。
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